持分譲渡の実務上の注意点

持分譲渡は撤退・買収に関して重要な組織再編の方法です。

持分譲渡のメリットは、手続に要する時間が、新設・閉鎖に比べて短く簡便である事が挙げられます。

勿論、デメリットや注意を要する事項もありますので、これらを実務面も踏まえて解説します。

 

1.外資企業の持分譲渡の実務

 

● 持分譲渡許可

外資企業の持分譲渡に関する根拠法は、「外商投資企業出資者の持分変更に関する若干の規定(外貿易経済合作部・国家工商行政管理局[1997]外経貿法発第267号)」となります。

当該規定に基づいて、持分譲渡の対象となる法人の原認可機関(商務主管部門)に、出資変更・定款変更等の許可申請を行う事になります。社名変更が必要な場合は、この時点で同時に申請を行います。

 

● 持分譲渡代金決済

持分譲渡代金は当事者間(新旧出資者間)で直接決済します。また、決済実績は持分譲渡の手続に際して政府機関に提示する必要はありません。

 

新旧出資者の双方が外国企業、つまり、日本企業同士の様な場合は、決済は日本内で完結しますので、決済条件は自由に設定できます。

一方、日本企業が中国企業(在中外資企業を含む)に譲渡する場合、持分譲渡代金は中国から日本に対外送金される事になります。この送金は、従前は、外貨管理局の許可が別途必要でしたが、「直接投資外貨管理政策の一層の改善と調整に関する通知(匯発[2012]59号)」により、外貨管理局の許可は不要となりました。現在では、商務主管部門の持分譲渡認可情報を主管の外貨管理局に登記(備案)するだけで対外送金が可能であるため、送金実務が簡便になっています。

 

但し、実務上、下記で解説する納税を行わない限り中国から日本への送金が認められないため、後払いにならざるを得ない(全ての手続完了後の代金回収にならざるを得ない)点が、譲渡側としては不安要素になります。

 

● 納税実務

1)課税所得の算定と税額

日本企業が中国法人の持分を譲渡して譲渡益を得た場合、企業所得税法第3条・第3項に規定する「非居住者企業が機構を構築しないで稼得する中国内源泉所得」に該当します。

 

同法第4条には、この所得に対して20%の税率を設定していますが、同法実施細則第91条で、税率が10%に軽減されています。

更に、同法第16条には、企業が資産を譲渡する場合、資産の帳面簿価を課税所得から控除することができると規定されています。

 

以上の結果、非居住者企業が持分譲渡を行った場合、譲渡益(譲渡額から出資原価を控除した金額)に対して、10%の企業所得税課税が行われる事になります。

 

尚、出資した通貨と譲渡した通貨が異なる場合、どの様に計算するかという事に付いては、「非居住者の持分譲渡所得に対する企業所得税管理を強化することの通知(国税函[2009]698号)」・第4条に、以下の通り規定されています。

 

【持分譲渡所得を計算する場合には、外国法人により譲渡される持分の居住者企業への投資時(新規出資した場合)、若しくは、現出資者から当該持分を購入する時(持分購入により取得した場合)の貨幣で、持分譲渡価格、及び持分原価を計算しなくてはならない。】

 

つまり、出資した通貨で課税所得を確定させる(米ドルで出資した場合は、売却通貨に拘わらず米ドルで所得を確定させる)事になります。

 

譲渡価額は当事者が自由に決められますが、税務上は適正時価に基づく取引が原則となりますので、取引価額の妥当性に関しては所管税務機関(持分譲渡の対象となる外資企業の所管税務機関)が検証を行います。この際、通常は、資産鑑定評価報告書の提示が求められますので(特に、不動産などの様に含み益が生じる可能性が高い資産を保有している場合)、事前の準備が必要となります。

 

持分譲渡に対する課税に付いては、納税義務者は前出資者(持分を譲渡する事によって、課税所得を得た非居住者)となりますので、どの様に納税を行うか、という問題が生じます。

 

2)納税実務

税務機関は対外送金による納税を受け付けませんので、中国内での人民元払いが必要となりますが、通常は、持分対象となる企業が支払い、前出資者が納税資金分を日本より送金する(銀行管理により、順番は前後する可能性有り)事になります。

 

この精算送金は、国際間の立替金決済になりますが、「非貿易項目外貨決済管理規定(匯発[2013]30号)・第6条・第9項に、関連関係を有する国内外の機構の立替決済を認めていますので、原則として決済可能です。

 

但し、管理内容に地域差・銀行管理の差が有るため、具体的な手続に付いては事前確認が必要となります。

 

2.その他の持分譲渡の注意点

● 持分売買上のリスク

持分譲渡に際しての懸念事項としては、譲渡側は代金回収、譲受側は購入した法人の隠れ債務の懸念かと思います。

 

隠れ債務の問題とは、開示された財務諸表、資料などに表れていない問題(含み損、債務保証などの偶発債務、その他の企業内の問題など)が無いかという点です。

この点に付いては事前に財務・法務ディユーディリを行い、開示されていない内容が起因となる問題が買収後に発生した場合には、前出資者が責任を負う旨の瑕疵担保責任を譲渡契約上織り込むというのが対処法となります。

但し、実際にこの条件を元に訴訟を起こした場合、賠償金を徴収する事ができるかという実務上の問題があります。

 

また、譲渡側に付いても、中国外で外貨管理が自由な国の企業(他の日本企業など)に売却する場合は、一部前払い条件を設定する等のリスク回避方法が取れますが、中国企業に売却する場合は、上記1.の持分譲渡代金決済で解説した通り、後払い条件の代金回収とならざるを得ないという問題があります。

 

この様な点を考慮すると、やはり、信頼関係を構築しにくい相手先とは、譲渡側も譲受側も取引がしにくいのは確かでしょう。

 

● 雇用関係

持分譲渡は出資者の変更であり、対象となる会社自体は存続していますので、雇用関係は継続します。よって、経済補償金の支払い義務はありません。

一方、持分譲渡を理由とした解雇や労働条件の改悪も認められません。

 

以上

 

 

【お問合せ・お申込み先】 

水野コンサルタンシー日本代表事務所

横浜市西区みなとみらい2-2-1横浜ランドマークタワー20階

Tel: 045-277-3764  Fax:045-277-3801 

 

中国・増値税の制度と実務
by カエレバ

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