移民に関する日本への回答は?:労働力不足に対処する短期的戦略から日本の人口問題に対処する長期的戦略へ――スティーブン・ナギ国際基督教大学准教授

15年以上の付き合いがある、国際政治学者のスティーブン・ナギ先生は、日本と中国、韓国、3国間の外交や経済などについて、グローバルな視点からダイヤモンド・オンライン「DOL特別レポート」に寄稿しています。

 

また、アルジャジーラやCNBCなどに出演し、日本の政治関係の解説などを行っています。アジア地域で活動を行う企業へのコンサルティングなども行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

 

そのナギ先生が、「移民に関する日本への回答は?:労働力不足に対処する短期的戦略から日本の人口問題に対処する長期的戦略へ」をまとめられました。

 

人口減少による労働力不足は日本の長期的課題であり、大きなリスク要因です。

グローバルな視点からの本レポートは参考になるものと思います。

 

スティーブン・ナギ

 

1971年カナダ生まれ。2004年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程(国際関係)修了、2009年同博士課程修了。

2007年早稲田大学アジア太平洋研究科のリサーチ・アソシエイト、2009年香港中文大学日本研究学科助教授に就任、2014年より現職。

早稲田大学「アジア地域統合のための世界的人材育成拠点」シニアフェロー、香港中文大学香港アジア太平洋研究所国際問題研究センター研究員を兼任。

研究テーマは東北アジアの国際関係、日中関係、アジアの地域統合及び地域主義、非伝統的安全保障、人間安全保障、移民及び入国管理政策。

 

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移民に関する日本への回答は?:労働力不足に対処する短期的戦略から日本の人口問題に対処する長期的戦略へ

 

9月21日水曜日、ニューヨークで行った講演で、安倍晋三首相は「わたしは日本の人口問題をまったく心配していません。日本は高齢化し、人口は減少するでしょう。しかし、それは改革に対するインセンティブになります」と発言した。

 

この楽観的な観点にもかかわらず、日本の人口統計が経済に与える影響についての事実は明白だ。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総労働人口は、仮に70歳まで働いたとしても、2060年には5600万人に減少する。

 

また、同研究所によれば、全人口の40%前後を推移し続ける高齢者人口は、労働人口にとって重い負担となるだろうと指摘している。こうした労働力不足は結果として経済のダイナミズムを失わせ、税収の減収を引き起こすだけでなく、国内的にも国際的にも日本の力量を示すことを難しくするだろう。

 

今のところ、日本の労働力不足は経済全体で均等に感じられているわけではない。労働力不足は、特に建設業、運輸業、商業・サービスなどのセクターでひしひしと感じられている。これらのセクターは、いわゆる3K(キツイ、キタナイ、キケン)労働が多いとされ、少なくとも1980年代以来、大卒者には人気がない。またフルタイムのホワイトカラーと比較して給与が低く、時間も不規則だ。一方で、労働市場に入る新卒者の減少に呼応して、失業率は3%台に低下し、中産階級の労働者にとっては日本経済は相対的に改善しているといえる。

 

労働力不足に対処するために、自民党の労働力特別委員会は、移民に関する本質的な議論はひたすら回避しながら、外国人労働者を増やす政策を提案する。この提案は現存する数々の移住を、高度に熟練した外国人のプロ、的を絞った移動、非熟練労働者の3つの流れとして見ている。

 

高度に熟練した外国人のプロの流れでは、国際的な企業で働く移民が、革新的なビジネスをセットアップし、日本へ投資するなど、一般的に歓迎されている。入国が容易になり、様々な移行スキームを通して、彼らには永住権取得が奨励される。安倍首相はすでに、永住権の申請を希望する特定カテゴリの法的な外国人居住者のために、待機時間を5年から3年未満に減らしている。

 

的を絞った移動スキームは、芸術家や教師、ネイティブ日本人には適さないエリアでの職業、またはヘルスケアのような労働者不足市場における職業が重視されている。フィリピンやインドネシアからのヘルスケア従事者のような場合、これらの移動ステータスは無期限に、または場合によっては更新することができます。彼らは日本語で行われている国家資格審査を通過した後、日本で看護師として3年契約を締結した上で、二次医療サービス提供者として移動することができまる。だがこれまでのところ、ヘルスケア従事者の引き留めはほとんどできていない。その原因は、資格試験のみならず、職場での日本人と移民の一体化に挑戦したが、上手くいかなかった結果でもある。

 

非熟練ストリームでは、日本の大学で学んでいる間、サービスセクターのパートタイム研修生として働く、一時的なものだ。

 

重要なのは、これら3つの移動カテゴリでは、移民が中産階級の仕事を奪い取ることはない、ということだ。この移動ステータスは一時的な非熟練労働者の確保であり、労働力不足が大きいセクターの労働力を補うことである。つまり、平均的な日本人が魅力を感じないセクターに的を絞ったもので、あくまで目先の労働力不足を、一時的に補うことが議論の中心になっている。

 

 

この戦略は、退職年齢の上昇やいわゆる「ウーマノミクス」を通じて労働者をより動かそうと政府が企図する、センシティブな分野での労働力不足を和らげるかもしれない。安倍政権は労働市場はもちろん、マネジメント層やリーダー層で活躍する女性を増やそうとしている。労働力不足対策におけるこのアプローチの肝心な部分は、構造的変化やテクノロジーと、よりオープンな経済を通じて日本人労働者の労働生産性を高めるという、アベノミクスの傘の下での政策であることだ。

 

長期的には、これらのアプローチは日本の解決困難な人口問題を完全に和らげるには不十分だろう。家族あたりの出生率が2~3人になったとしても、日本の人口減少を食い止め、労働力を改善することはできない。著名な移民思想家で、元東京入国管理局チーフの坂中英徳氏は、代わりに、日本の人口の10%に相当するレベルで移民を受け入れるという、思いもよらない未来を提示している。

 

坂中氏の、移民労働者は日本の人口、経済そして文化ルネサンスに貢献するという移民国家ビジョンは賞賛に値するが、安倍首相のニューヨークでの発言に疑問を感じるのと同じくらいに非現実的だ。政府がそれを是認する意思があるかどうかにかかわらず、日本の人口は明らかに問題があり、移民は、日本の当面の労働力不足を解決するための究極の答えではない。

 

日本の人口の内部崩壊に対する大いなるチャレンジには、日本人の特質に最適で、人的資源を最大化する頑強な一体化政策をともなった移民政策が必要だ。そして、中心的社会において民族的・文化的多様性がほとんどない日本が、文化間・異人種間摩擦を最小化する国となることも求められているのだ。

 

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