中国とベトナム間の貿易取引とFTAの活用

 

ベトナムで1次加工、中国で2次加工を行う場合(若しくは、その逆)、次のような形態が考えられます。

● ベトナムから中国(若しくは、その逆)に、一般貿易輸出を行う。

● 香港等を拠点として、先に、ベトナム、次に中国(若しくは、その逆)で加工貿易を行う。

 

後者の場合は、ベトナム、中国の双方で加工貿易を行う事になりますので、特に、FTAを活用しなくても、双方の地域で輸入原材料に対して関税・付加価値税の課税が回避できます。

一方、前者の場合は一般貿易形態となるため、ベトナムから輸出した貨物の中国輸入時(若しくは、その逆)に、原則として関税・付加価値税が課税されるため、税コストを下げるためには、中国・ASEAN間のFTAを活用し、関税免除措置を受ける必要があります。

その注意点は、以下の通りです。

 

1.FTAの活用

中国・ベトナム間の貿易取引でFTA(関税免除措置)の適用を受ける場合の注意点は、以下の通りです。

尚、FTA活用に関する中国側の注意点に付いては、「中国とASEAN諸国の全面的な経済連携枠組み協議における輸出入貨物原産地管理弁法(税関総署令2010年第199号)」に規定されています。

 

(1) 原産地証明

FTAの適用を受けるためには、Form-Eと呼ばれる原産地証明を取得する必要が有ります。

Form-Eの発給機関は、中国の場合は質量検験検疫局、ベトナムの場合は商工省傘下の輸出入管理局となります。

原産地証明取得に当たっては、40%以上の原産地割合、当該地での関税分類番号変更などの基準を満たす必要があります。

 

(2) 直送条件

中国・ASEAN間のFTA適用を受けるためには、貨物が直送される必要があります。

但し、以下の場合は、輸送上の理由による第三国経由であり、当該国で加工・消費されない場合は、第三国・地域(香港等)を経由しても、直送と見なされます。

この様な第三国・地域を経由する場合は、所管税関に未加工証明(Movement Certificate)を申請する事ができ、輸入地でこれを提示することにより、FTAの適用が認められます。

因みに、香港を経由する場合、香港は中国・ASEAN間のFTAの対象地域から外れますが、単なる積替えのためのみの経由である場合は、未加工証明の取得が可能となります。未加工証明は、実務的には、香港にある検疫局の傘下機関(中国検験有限公司・香港)のForm-Eに対する押印となります。

 

(3) 輸入地域での提出書類

FTAの適用を受ける場合、輸入地の税関に対して、「Form-Eのオリジナル、インボイス、パッキングリスト、その他の書類」を提出して申請を行う必要が有ります。

また、貨物が第三国・地域を経由している場合、未加工証明・船積国で発行されたスルーB/L等の提示が必要となります。

 

(4) 第三国・地域でのインボイス・スウィッチ

中国とASEANのFTAでは、第三者インボイスの使用が認められています。

よって、中国・ASEAN間で貨物が直送される事を条件に(積替えのための第三国・地域経由は可)、日本企業や(FTA対象地域ではない)香港企業等が、インボイス・スウィッチを行っていても(所有権変更により行い利ザヤを得ていても)、FTAの活用は認められます。

この場合の注意点は、Form-Eを申請する際に、「Third Party Invoice」の項目にマークを付け、発給機関に、第三国・地域企業との契約書とインボイス、更には、第三国・地域企業と仕向け国企業との契約書とインボイス等を提示して、取引の連動性を証明する必要が有ります。

このため、輸出地の企業(Form-Eを申請する企業)には、第三国・地域企業の利ザヤが、必然的に把握されてしまいますので、ビジネス上の理由により、これができない場合はFTAの活用ができなくなります。

 

2.中国・ベトナム間の貿易取引決済

中国・ベトナム間で貿易取引を行う場合、決済条件に関しては、中国・ベトナム双方で以下の様な注意点があります。

 

(1) 中国側

1)貨物代金決済の原則

中国では、2012年8月1日に貨物代金決済改革(匯発[2012]38号による核銷制度廃止)が実施され、対外決済手続が簡略化されました。

輸出貨物代金・輸出代金前受金の受領に付いては、銀行に入金申請書を提示すれば入金が認められます。また、輸入貨物代金の支払いは、「輸入通関単・契約書・インボイス」の何れか、輸入代金前払金の支払いは、契約書・インボイスの何れかを提示すれば対外送金が可能です(輸入代金決済の支払いに付いては、2017年5月1日より、匯発[2017]9号により、事後に銀行の輸入通関データ確認が実施されます)。

この様に、決済時の審査は比較的簡単ですが、外貨管理局は企業データのモニタリングを行っており、直近12か月の指数(通関と決済金額のかい離等)・特定の残高(ユーザンス・前受・前払残高と貨物代金決済累計額の比率等)の確認が実施されており、一定基準を超えると外貨管理局の立入検査が実施されます。オペレーションに問題が有る場合は、外貨ランクの降格に繋がり、外貨操作が制限されますので、適切な決済(通関データに準拠した決済)を行うよう、注意が必要となります。

 

2)ユーザンス、前受・前払の管理

貨物代金決済の根拠となる匯発[2012]38号では、外貨管理局による指数管理の対象となる輸出入ユーザンスの定義を、通関後90日超経過した時点で決済を行う取引。前受・前払の定義を、通関の30日超前に支払いを行う取引と規定しています。

その上で、この様な取引残高の何れかが、直近12か月の貨物代金決済金額(輸出・輸入取引毎に管理)の25%を超過すると、外貨管理局の立ち入り検査が実施される可能性がありますので、企業はこれに抵触しない様、自主管理が必要になります。

尚、ユーザンス・前受・前払期間が1年超の場合、直近12か月の発生額(残高ではなく取引実行額)が貨物決済代金決済額の10%を超過すると、立入検査要件に抵触する事になります。

 

(2) ベトナム側

ベトナムの貨物代金決済の根拠は、外国為替法(28/2005/PL-UBTVQH11)となります。

ここでは、居住者(ベトナム企業)・非居住者(外国企業)間の適切な取引に関する対外決済(同法第2章・第6条)と、認可された金融機関での外貨の購入が認められています(同法第2章・第7条・第1項)。また、貨物の輸出代金に付いては、認可された金融機関の外貨口座での受領が義務付けられます(同法第2章・第7条・第2項)。

ベトナムでは、輸出貨物代金・輸出代金前受金の入金に際しては、特段の書類提出は不要ですが、金額が相対的に高額な場合(明確な金額基準は無い)、着金時に銀行より内容確認を求められる場合があります。

輸入貨物代金の支払いに付いては、輸入通関証明・契約書・インボイスを銀行に提示する必要があります。また、輸入代金前払の場合は、契約書・インボイスを銀行に提示する必要が有ります。

以上の通り、ベトナムでは、ユーザンス・前受・前払に対して、明確な比率制限などを実施されていません。

 

以上

 

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