中越間の業務委託料の受け払い

 

中国とベトナム間で業務委託料を受け払いする事があります。

業務委託料とは、提供した役務に対する対価の受け払いで、その内容は、出張対価・情報提供料・資料作成料・各種指導の対価等、多岐に渡ります。

非貿易項目の送金に付いては、支払い国側の外貨管理の問題だけでなく、企業所得税・付加価値税等の課税(源泉徴収課税・移転価格等)の問題も生じますので、送金可否・採算性・税務リスクの検討に当たっては、両国の制度を把握する必要が有ります。

中国・ベトナム間で業務委託料の送金を行う場合の、外貨管理上・税務上の注意点を、以下、解説します。

 

1.中国からベトナムへの送金

ベトナム企業が、中国企業に役務提供をする事により、中国企業から業務委託料を回収する場合の、中国側の外貨管理・税務上のポイントは以下の通りです。

 

(1)送金手続

業務委託料の送金(非貿易項目送金)の根拠となるのは、「サービス貿易に関する外貨管理法規(匯発[2013]30号)」と「サービス貿易等の項目の対外支払税務備案に係る問題についての公告(国家税務総局・国家外貨管理局公告2013年第40号)」です。

ここでは、1回の支払額がUS$5万超の場合は、所管税務局での備案(支払いの届出)が必要となり、送金内容の審査が行われます。

US$5万以内の金額であれば、銀行審査のみで送金が可能であり、契約書・請求書を提示すれば送金は可能です。

 

(2)中国側の源泉徴収

中国からベトナムへの送金に当たっては、以下の課税が行われます。

 

● 企業所得税 10%(企業所得税法第4条・同法実施細則第91条)

中越間には租税条約が締結されていますが、業務委託料に関しては特段の優遇税率の設定が無く、国内法と同様10%となります。

 

● 流通税(増値税)

6%の税率で増値税が課税されますが、これに付いては、送金者の中国企業が負担すれば、仕入控除が受けられ(中国企業が一般納税人である事が前提)、控除無く送金が受けられます。

 

● 付加税

流通税(増値税)額に対して、11~13%の付加税(河道管理費・教育費賦課・城市建設税等)が課税されます。

 

2.ベトナムから中国への送金

中国企業が、ベトナム企業に役務提供をする事により、ベトナム企業から業務委託料を回収する場合の、ベトナム側の外貨管理・税務上のポイントは以下の通りです。

 

(1)送金手続

業務委託料の送金(非貿易項目送金)の根拠となるのは、「外国為替法(番号 28/2005/PL-UBTVQH11)」ですが、ベトナムでは、貿易項目と非貿易項目との区別無く、経常取引に関する全ての送金は、認可された金融機関を通じて自由に行うことが認められています。

但し、非貿易項目の支払いに際しては、銀行での真実性の確認が必要であるため、業務委託料の送金に際しては、銀行に契約書・請求書を提示する必要があります。

また、業務委託完了時には、業務委託完了合意書の提示も必要となります。

 

(2)ベトナム側の源泉徴収

ベトナムから中国への送金に当たっては、ベトナム国外で提供された業務委託を除き、業務委託内容に応じて外国契約者税の課税が行われます。

外国契約者税は、源泉徴収される以下の法人税と付加価値税を指します。

 

● 法人税 

法人税課税売上高に対して0.1%~10%の法人税が課税されますが(財務省通達番号103/2014/TT-BTC第13条・第2項)、一般サービスには5%が適用されます(他は、輸送サービス2%、ベトナム国境内での物品の供給1%、利息5%、ロイヤルティ10%等)。

 

● 付加価値税 

付加価値税課税売上高に対して2%~5%の付加価値税が課税されます(財務省通達番号103/2014/TT-BTC第12条・第2項)が、一般サービスには5%が適用されます。

 

税務リスクの検討

中越間で業務委託料を受け払いした場合、どの様な税務リスクに注意すればよいのでしょうか。中国・ベトナム双方の注意点に付いて解説します。

 

1.中国側の税務上の注意点

両国間の業務委託料の受け払いに付いて、中国側の税務上の注意点を、中国からの支払い・ベトナムから中国への支払いの双方に付いて検証します。

 

(1)中国からベトナムへの支払い

中国からベトナムに対して業務委託料を支払うのは、ベトナム企業の中国企業に対する役務提供が前提となっています。

この場合の中国側の主要な税務リスクとして、PE認定が挙げられます。

中越租税条約では、ベトナム企業が、連続する12ヶ月以内に6ヶ月超中国においてコンサルティング役務を提供すると、PE認定要件に該当する事が規定されています(この条件は、日中租税条約と同様です)。

尚、役務提供期間は役務開始から終了までがカウントされ、不在期間は原則として考慮されませんので、業務委託契約に定める役務提供期間が6ヶ月を超過する場合、PE認定を受ける可能性が生じます。

この類型のPE認定は、中国で最も頻繁に行われているものですが、影響は、出張者の183日ルールの提供が認められなくなるというものです。

企業所得税課税を目的としたPE認定が、個人所得税課税につながるのは、中国のPE認定実務の特殊な点です。

これは、PEが適切な実質所得課税を受けていない(実際に組織が無いため、当然ではありますが、組織としての会計記帳・税務申告をしていない)事から、みなしルールが適用されることになり、関連する出張者の人件費は、当該PEが負担していると見なされます(国税発[1994]148号)。

183日ルール適用の前提は、当該人員の人件費を中国内の組織が負担していない事であるため、この適用条件を満たさない事を理由として、適用が否定されるものです。

 

(2)ベトナムから中国への支払い

中国企業がベトナム企業に対して役務を提供し、業務委託料を徴収する場合、ベトナム側で外国契約者税(法人税と付加価値税の源泉徴収課税の総称)が徴税されます。

法人税に付いては、税法上は、中国側で外国税額控除の適用が受けられる筈ですが、実際には、外国税額控除の適用は、極めて困難ですので、この点、採算考慮の際に注意する必要が有ります。

 

2.ベトナム側の税務上の注意点

ベトナムから中国への支払いに付いて、ベトナム側の税務上の注意点を下記します。

中国企業がベトナム企業に対して役務を提供し、その対価が中国企業に支払われる場合、ベトナム側で外国契約者税(法人税と付加価値税の源泉徴収課税の総称)が徴税されます。

外国契約者税に関する注意点は、以下の通りです。

 

(1)物品売買に付随する役務提供

中国企業からベトナム企業への物品売買(貿易取引)は、中越租税条約第7条に、「事業所得に関してPE(Permanent Establishment)なければ課税無し」のルールが定められていますので、これに基づけば、物品売買益に対する法人税課税は免除されるのが原則です。

但し、物品の所有権やリスク負担がベトナム国境内で移転する場合において、中国企業がベトナム国境内の運送コストを負担する場合等は、物品売買に伴うベトナム内での役務提供があったと看做され(一種のPE認定とも言えます)、貨物金額全体に対して1%の法人税が、外国契約者税として課されます(財務省通達番号103/2014/TT-BTC第1条第3項)。

これは、非保税区域のみならず、保税倉庫での所有権移転であっても、同様に課税が行われます(財務省通達番号103/2014/TT-BTC第7条第2項)。

 

(2)複数役務に対する適用税率

外国契約者税は、提供する役務の内容に応じて異なる税率が設定されています。

但し、税率の異なる複数の役務を提供する場合において、個別役務毎の金額を契約に明記せず、役務全体金額を一括記載すると、全体に対して最も高い税率が適用される(役務に対応する個別税率の適用が認められない)ため注意が必要です(財務省通達番号103/2014/TT-BTC第12条第2項、並びに、同通達第13条第2項)。

よって、複数の役務を提供する場合は、税コストの削減のため、契約額の一括記載は避け、役務毎の契約額を定める事が望ましいと言えます。

なお、外国契約者税は、外国契約者である中国企業が負担すべきものですが、契約内容は当事者の任意ですので、契約条件に定めれば、ベトナム企業を負担者とする事もできます。

また、契約書には、納税負担の明記、つまり、契約金額が総額(税額控除前の金額)か、純額(控除後の金額)かの区分記載をする事が、税額確定の観点より望ましいと言えます。

 

以上

 

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