中越租税条約の概要

 

二国間でビジネスを行うに当たり、法人税・個人所得税の課税判定上、重要な基準となるのが租税条約ですが、中国・ベトナム間にも、租税条約が締結されています(1995年5月17日調印・1997年1月1日適用開始)。

中越租税条約の概要は、以下の通りです。

 

1.恒久的施設と事業所得に対する課税

恒久的施設(Permanent Establishment;PE)とは、相手国側における事業所得の課税判定に際して重要な概念となります。

これは、一般の租税条約(中越租税条約も同様)には、相手国のPEを通じて事業所得を稼得しない限り、相手国で法人税課税を受けない(つまり、相手国に対して単純輸出を行っただけでは、相手国で法人税は課税されない)事が規定されているためです。

中越租税条約における恒久的施設の概念は、以下の通りです。

 

(1)恒久的施設の定義

恒久的施設には、以下の様な内容が含まれる事が規定されています。

● 事業管理の場所、分枝機構、事務所、工場、作業場所、鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所。

● 6ヶ月以上継続する工事。

● 連続する?ヶ月以内に、連続、若しくは、累計して6ヶ月超実行される役務請負、コンサルティング役務。

● 恒常的に代理署名権(契約締結権)を行使する代理人の起用(独立した代理人を除く)。

● 保険会社が、独立した代理人以外を通じて相手国で保険料の受領や保険業務の引き受けをする場合(再保険を除く)。

 

(2)恒久的施設に該当しない行為

上記(1)に拘わらず、以下の行為は、恒久的施設に該当しない事が規定されています。

よって、原則的には、保税区域における単純な在庫オペレーション、加工貿易の委託、駐在員事務所の設置、コミッション代理会社の起用などの行為に対しては、PE認定を受けない(相手国では法人税課税を受けない)事になります。

但し、実際には、課税を受ける事例も有りますので、この様な租税条約と実務上の齟齬に付いて、第13回・第14回で解説します。

● 保管・展示・引渡しのみのために、相手国に商品を保管する事、及び、その為に設備を使用する事

● 加工のためだけに、相手国に商品在庫を保管する事

● 企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する事

● 企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する事

● 通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立代理人を通じて一方の締約国内で事業活動を行う事(その代理人の全部、ほぼ全部の活動が当該企業の代理業務である場合は独立代理人とは見なさない)

 

(3)恒久的施設と事業所得に対する課税

物品売買所得等の事業所得に対しては、相手国の恒久的施設を通じて販売しない限り、相手国では課税されない(居住地国でのみ課税される)事が規定されています。

また、課税される場合に付いては、恒久的に帰属する所得に対してのみの課税に限定されます(帰属主義)。

 

(4)国際運輸所得

国際運輸所得に対しては、相手国側では課税されない事(居住地のみでの課税)が規定されています。

 

2.配当・利子・使用料等の源泉徴収

事業所得に対しては、相手国に恒久的施設(PE)が無い限り、法人税課税を受けない事は前回解説しましたが、配当・利子・使用料等に付いては、相手国のPEの有無に拘わらず、源泉徴収税課税を受ける事になります。

配当・利子・使用料の源泉徴収に際しては、租税条約に制限税率(国内法が制限税率を上回る場合は、租税条約の制限税率に課税が制限される)が設定されています。

 

(1)配当

相手国に出資した会社より受領する配当については、法人税の源泉徴収課税は10%以内に制限されます。

 

(2)利子

相手国に対して貸付を行い、徴収する利子に対しては、法人税の源泉徴収課税は10%以内に制限されます。

尚、政府機関に対して支払われる利子に付いては、課税が免除されます。

ここでいう政府機関とは、ベトナムに付いていえば、「ベトナム国有銀行、ベトナムの行政区域・地方当局、資本が完全にベトナム政府・行政区・地方当局に保有され、双方の政府機関が随時同意する金融機関」を指します。

中国に付いていえば、「中国国家銀行、行政区・地方当局、資本が完全に中国政府・行政区・地方当局に保有され、双方の政府機関が随時同意する金融機関」を指します。

 

(3)使用料

使用料に対しては、法人税の源泉徴収課税は10%以内に制限されます。

尚、使用料とは、文学上、芸術上、若しくは、科学著作物の版権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式又は秘密工程に対して支払う各種の報酬。

産業・商業・科学設備、若しくは、産業上、商業上、科学上の経験に対する情報の使用と使用権に対する各種の報酬を言うと規定されています。

つまり、知的所有権の使用許諾を相手国の企業等に与え、その対価として受領する全ての種類の支払金が使用料に該当します。

 

(4)譲渡所得

持分譲渡・財産譲渡などを行った場合の譲渡所得に対しても、上記(1)~(3)の投資所得と同様、相手国側で課税対象となりますが、譲渡所得に対しては、制限税率は設定されておらず、国内法の定めに従う事になります。

 

3.個人の報酬に対する課税

(1)賃金給与

中越租税条約においても、賃金給与に関しては、183日ルールが規定されています。

183日ルールとは、相手国での滞在日数が183日以内であれば、給与所得に対しては、相手国での個人所得税の課税が免除されるルールです。

183日ルールの単位は、租税条約によって、「暦年」とするものと「任意の12ヶ月」とするものに分かれますが、中越租税条約は、暦年を単位としています。

尚、一般的な183日ルール適用の前提は、相手国で給与が支払・負担されていない事ですが、これは中越租税条約でも同様です。

 

(2)取締役報酬

取締役報酬は、賃金給与とは異なり、183日ルールの適用は受けられません。

これは、取締役報酬は経営の対価であり、必ずしもその場にいなくても、役務提供が可能であるためで、これを考慮して、滞在日数(賃金・給与の課税判定に使用)ではなく、取締役を務める会社の所在地に課税権が与えられています。

 

以上

 

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