外資企業登記制度の規制緩和について

 

中国では、ここ数年、外資企業の設立・登記事項変更・閉鎖に関する規制緩和が実施されています。2014年以降に実施された規制緩和措置について、2回に分けて解説します。

 

1.中国側

2012年より、中国各地で商事登記制度改革が進められていましたが、「登録資本登記制度改革方案の通知(国発[2014]7号)」、「企業年度検査作業停止に関する通知(工商企字[2014]28号)」により、2014年3月1日から全国的に施行されました。

商事登記とは、商事主体(自然人、法人、その他の経済組織)の設立・変更・抹消事項に関する、商事登記機関(工商行政管理局)での登記を指します。この様な各種登記制度・手続の合理化が商事登記制度改革の意義となります。

具体的には、資本金規制緩和、共同年次検査の廃止(年次報告への変更)、住所登記規制緩和などの措置が実施されています。

 

(1)資本金設定・払込み

「登録資本登記制度改革方案の通知(国発[2014]7号)」は、「出資額、出資時期、出資方法、現物出資比率に付いての制限廃止(出資者が自由に取り決める)」を認めており、それに合わせて、会社法・外資三法も改正されています(2014年3月1日施行)。

 

出資額については、会社法の最低資本金(3万元)が廃止されました。また、業法の最低資本金のいくつかが、2015年12月に(商務部令2015年第2号:下記※参照)により撤廃されています。

このように出資額に関する制限は緩和されていますが、外資企業に対する総投資と資本金の比率管理(工商企字[1987]38号)は現在も継続されていますので注意が必要です。

その他、会社設立登記時における払込資本金の登記が不要となり(登録資本金のみを登記)、営業許可証からも払込資本金額の記載が免除されました。

このように資本金額に対する要求は緩和の流れにありますが、5千万元以上の資本金の場合、国家工商行政管理局の許可を取得する事を前提に、企業名称を構成する地名に「中国」の使用が認められる(通常は「市」を使用することが要求されています)といった個別の資本金の条件はあります。

 

出資時期については、資本金払込期限が撤廃されました(改定前の会社法では2年以内。初回払い込みは20%以上)。

現在も定款には払込期限の記載は要求されていますが、5年、10年、経営範囲内などの記載が認められています。

 

出資方法については、現金出資比率の制限が撤廃されました(改定前の会社法では、30%以上を現金出資することが要求されていました)。

 

<※商務部令2015年第2号による個別業法最低資本金廃止>

「一部の規則及び規範性文書の改訂に関する決定(商務部令2015年第2号)」では、以下の通りの最低資本金規制撤廃が実施されている。

 

● 外資投資性公司

最低資本金はUS$3千万であり、この金額を2年以内に払い込む事(US$3千万を超過する金額に関しては、5年以内に払い込み)が義務付けられていたが、この制限が撤廃された。

● 外資国際貨運代理企業

500万元の最低資本金、分公司開設に当たり50万元/箇所の増資、更には、分公司開設条件として、資本金払い込み完了と設立1年経過が条件づけられていたが、この制限が撤廃された。

● 外資ファイナンスリース企業

最低資本金制限(US$1千万)が撤廃された。

● その他

外資ベンチャーキャピタル企業、競売企業、外資鉱山調査企業、対外工事請負企業、外資物流企業等に関する規制緩和。

 

(2)年度検査の廃止(年度報告への変更)

商事登記制度改革により、年次検査が年次報告に変更されました。

この変更により、工商行政管理局に対して、インターネットで「登記・備案を要する事項(定款、経営範囲、董事・監事、高級管理者氏名、分公司登記状況、再投資子会社状況、会社住所、その他)、資本金払込み状況、年度貸借対照表・損益計算書」を報告する形式になりました。

なお、年度報告を提出しない場合、登記された住所に連絡ができない場合などは、当該企業の記録は厳重違法企業リスト(ブラックリスト)に掲載されます。

ブラックリスト掲載から3年未満の期間に正常な状況となった場合は、工商行政管理機関に正常企業への登記変更を申請する事ができますが、3年経過しても改善されない場合は、永久にブラックリストに登録されることになります。

 



(3)オフィス登記

法人・機構の登記住所に関する規制が以下の通り緩和されましたが、その運用は地域によって異なっています。

 

1)一地多免許(中国語:一址多照)

深セン市・広州市では、1部屋(物理的な部屋ではなく権利証の発行単位を指しますが、便宜的に1部屋と記載します)あたり、2組織の登録が認められる様になりました。

当初は、広州市の場合は、同一の部屋に登記できるのはグループ企業に限定されていましたが(広州市商事登記暫行弁法)、その後実務運用が緩和され、現時点ではグループ外でも登記が可能になっています。

但し、上海市では、「上海市企業住所登記管理弁法」の規定では出資関係が有る企業であれば、一址多照が適用可能と規定されているにもかかわらず、依然として1部屋1組織の原則が強制されています。

上海市の工商行政管理局でのヒアリングでも、外資企業は一址多照の適用不可(案件によって許可する可能性はあるが審査が必要)との回答でした。

 

2)一免許・多住所(中国語:一照多址)

同一区内に複数の拠点を保有する場合、分公司登記が不要となり、経営場所を工商行政管理局のシステムに登録するだけでよくなりました。

但し、上海市では本格推進しておらず、依然として登記が必要となっています。

 

3)会社設立・住所変更時の提出書類

会社設立申請に際しては、不動産賃貸借契約書・不動産保有者の権利証・不動産管理部門での不動産賃貸借契約書の登記が必要ですが、一部地域ではこれが緩和されています。

 

● 広州

企業の新設に対しては、住所(経営場所)自己申告制度が開始され(2017年9月)、非ネガティブリスト業種に付いては、「商事主体住所(経営場所)自主承諾申告表」を提示するのみで法人登記手続が可能(賃貸契約書・権利証などの証憑を提出する必要は無い)となっています。

但し、現時点では、住所変更時は住所(経営場所)自己申告制度が適用されないため、賃貸借契約書・権利証の提出は要求され、不動産管理部門での賃貸借契約の登記証は不要(工商行政管理局よりの提出要求はない)となっています。

なお、オフィスの最低面積要求はありませんが、外国人の就業許可を取得する場合、会社の住所は30平米以上である事が実務上要求されています。

 

● 深セン

深セン市では、会社の設立にあたり、住所(経営場所)の不動産管理部門での登記が不要になり、また最低面積などの要件も廃止されました(賃貸借契約書・権利証・不動産管理部門での登記証等の提出は、何れも不要となりました)。

但し、銀行口座開設時に、賃貸借契約書の不動産管理部門での登記証の提示を求められる場合があるので注意が必要です。

 

● 上海

上海では、住所登記に関する規制緩和は実施されておらず、会社設立時(法人登記時)に、権利証コピー、賃貸借契約書オリジナル、不動産所有者の営業許可証(法人所有の場合)・身分証(個人の場合)、不動産管理部門での登記証の提示が必要です。また、実務上、オフィスの最低面積は10平米が要求されています。

 

(4)その他

資本金の払込みに関する検資報告書の作成が免除されました。また、広州市・深セン市では、外資企業に付いても会計監査報告書の提示が免除されました。

同時に、「資本項目外貨管理政策を一層改善・調整することに関する通知(匯発[2014]2号)」により、配当送金に際しても会計監査報告書、検資報告書の提示が免除されました。

結果として、広東省では、会計監査を見合わす企業も出ましたが、「貿易投資便利化の真実性審査の改善を一層促進する事に関する通知(匯発[2016]7号)」により、US$5万を超過する配当に付いては会計監査報告書などの財務状況を示す証憑の提示が改めて要求されるようになっています。

つまり、配当の必要上、会計監査報告書の作成は依然として必要ですので注意してください。

 

2.許可制から備案制への移行

2016年10月1日、三資企業法(外資企業法・中外合資企業法・中外合作企業法)が改定され、同時に、「外商投資企業設立・変更備案管理暫定弁法(商務部令2016年第3号)、以下、備案管理弁法」が施行されました。

 

(1)三資企業法の改定

「参入特別管理措置(=ネガティブリスト)に該当しない場合、設立・登記変更・経営期限の変更に付いては、審査許可事項を届出管理に移行する」という内容が追加されました(それ以外の訂正はありません)。

「発展改革委員会・商務部公告2016年第22号」では、外商投資産業指導目録(2015年改定)の制限類・禁止類、及び、奨励類ではあるが、出資比率・高級役員に規制が有るものを、ネガティブリスト業種と規定しています。

奨励類・許可類で、特段の出資比率制限や、高級管理職に関する要求(外国人の就任制限等)がない場合は、設立や登記変更に関して商務主管部門の許可審査は不要となり、備案(届出)手続で対応可能となりました。

その後、外商投資産業指導目録が2017年に改定され、ネガティブリスト項目が追加されていますが、基本的な概念は従来と同様です。

「外商投資企業設立・変更備案管理暫定弁法修正に付いての決定(商務部令2017年第2号)」により、備案制の範囲に、外国出資者による内資企業資本参画に伴う「外資企業転換」、「合併買収による基本情報変更」、「内資上場企業に対する外国出資者の戦略投資」が追加されました。

 

(2)備案手続

設立の場合、備案管理弁法の第5条に「営業許可発給前、若しくは、発給後30日以内にオンラインで届出を行う」と規定されました。

合併・分割・出資比率変更・増減資・経営期限の変更等の登記変更事項に付いては、同第6条に、「変更が生じた後、30日以内にオンラインで届出を行う事」と規定されました。

従来は、商務主管部門に事前許可申請が必要でしたが、事後のオンライン報告で対応可能となりました。

 

(3)備案制への移行の影響

備案制とは、提出書類に相違が無ければ審査不要で受理されるというものです(手続の簡便化を意味します)。

本来の備案の意義は、審査不要(書類不備・条件不一致などの事項が無ければ、自動的に備案は受理される)を意味する筈ですが、実際には備案審査が実施されているケースが多く、完全な規制緩和になっていません。

但し、フィージビリティスタディが提出不要になるなどの簡便化は実現しています(審査の迅速化にはつながっています)。

備案管理弁法には、ネガティブリスト以外の外資企業の設立に付いては、工商行政管理局での社名登録後に、直接(同じく工商行政管理局で)営業許可証の取得手続が可能となり、

商務主管部門での手続(オンラインでの備案)は、その間、若しくは、営業許可証取得後30日以内に行えばよいと記載されています。

但し、実際には従来通りの手順(備案終了後の工商登記)となっています。

 

以上 水野コンサルタンシー

 

お問合せ

MizunoConsultancyHoldingsLtd.

WEBサイト http://www.mizuno-ch.com

 

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