中国とベトナムのビジネス環境の展望

【中国】

1.優遇税制

かつては、企業所得税(優遇税率、タックスホリデー)、輸入免税(外資企業の自己使用設備等)をはじめてとして、各種の外資優遇を提供していた中国ですが、企業所得税に関しては、2008年の企業所得税法改定に際して、全ての外資優遇は打ち切られました。

また、自己使用設備の免税輸入制度も、段階的に制限が実施されています。

これらの経緯を踏まえれば、今後、魅力の有る外資優遇措置が打ち出される可能性は、極めて低いと考えてよいと思います。

 

また、地域を限定した(特定地域のための)優遇措置も廃止する方針が2008年の企業所得税法改定時に打ち出されています。

鳴り物入りで設置された自由貿易試験区(2013年上海で開始し、現在は、全国11ヶ所に拡大)が、独自の優遇税制を持たないのもこの方針が背景となっています。

 

現時点の優遇税制は、内外資の区別なく設定されていますが、ハイテク企業・中小企業(優遇税率)、インフラ企業等(タックスホリデー)限定された内容になっていますし、その内容も、過去の優遇税制と比べると、見劣りします。

つまり、現在の中国は、全体的なインフラ整備、法制度の整備などのビジネスインフラは整えるものの、優遇を提供して誘致を行う方針にはないと考えて良いと思います。

一応、現時点でも、(地域本部設立の優遇など)地域が助成金を交付して優遇を行う制度はありますが、そのハードル(投資規模・企業のネームバリュー等)は高い状況です。

 

この様に、進出企業としては、あくまでも、マーケット(販売・調達市場)、オペレーションの効率性というビジネス環境を前提に、進出するか否かを判断する状況となっていますし、それは、今後も同様と思われます。

 

2.ビジネス環境

製造業に関しては、誘致が成熟した大都市においては、プロジェクトの内容が問われる様になっており、その基準を満たさない場合は、工業用地の取得・賃借が難しくなっています。

また、環境対応、危険品管理対応に付いては、法律だけでなく、実務面でも強化されています。

 

中国における加工製造のイメージは、10数年前には、輸出加工(加工貿易)、それも、付加価値が低い組立加工というものでしたが、現在では状況が大きく変わっています。

加工貿易形態は、「保税措置の提供」という一種の優遇供与の形態ですので、付加価値が低く、税収貢献が低い来料加工は、既に、少なくとも沿海部では認可の取得が困難です。

加工貿易全体としてみれば、政策的には育成方針に有りますが、産業育成方針に合わない品目は、加工貿易禁止目録の改定の形で、加工貿易が禁止されます。

 

つまり、製造業に関していえば、その付加価値、製造品目等によって、企業側が選別を受ける立場となっていますし、環境保護基準の徹底は、今後の一層の管理強化が予想され、これが、企業の運営コストに反映されます。

 

勿論、中国の産業集積の高さ(現地調達マーケットの発達)、販売市場の大きさ、インフラの発達は魅力的であり、それが、中国で加工製造を行う事のメリットとなっているのは確かですが、企業規模・業種・付加価値等の要素で、企業側が受入側(地方)から選別される傾向が、徐々に強くなってきています。

 

【ベトナム】

1.優遇税制

かつては、内資企業の企業所得税標準税率が35%に定められていたのに対して、外資企業の標準税率は25%と優遇されており、さらに一定の事業、地域への投資に対しては、10%、15%、20%の優遇税率が適用され、1年~4年の免税期間、2年~4年の減税期間も設けられていました。

このように各種の外資優遇を提供していたベトナムですが、企業所得税に関しては、2005年の共通投資法制定に際して、全ての外資優遇は打ち切られました。

標準税率は内外資ともに28%に統一され、その後段階的な引き下げが行われ2016年からは20%となっています。

WTO加盟に際しての投資環境の内外資間の不平等是正を目的としていますので、これらの経緯を踏まえれば、今後、魅力の有る外資優遇措置が打ち出される可能性は、極めて低いと考えてよいと思います。

 

現時点の優遇税制は、内外資の区別なく設定されていますが、ハイテク分野、インフラ整備等一定の事業内容への投資、若しくは、社会的・経済的に困難な地域等一定の地域への投資に付いては、以下の通り、手厚い優遇が提供されています。

 

(1)教育、医療分野等への投資には、企業所得税率10%、優遇期間は投資登記証記載の全活動期間、利益計上から4年間の免税、その後5年間の税率半減(企業所得税率5%)が適用されます。

 

(2)ハイテク、インフラ分野等への投資には、企業所得税率10%、優遇期間15年、4年間免税、9年間の半減(企業所得税率5%)が適用されます。

 

(3)社会的・経済的に困難な地域への投資には、企業所得税率20%、優遇期間10年、2年間免税、4年間半減(企業所得税率10%)が適用されます。

 

つまり、外資優遇というよりは、産業、地域に対する優遇ですが、これが、どの様に調整されていくかは、現状不透明な部分があります。

進出企業としては、これらの動向を分析する必要が有りますし、また、マーケット(販売・調達市場)、オペレーションの効率性というビジネス環境を前提に、進出するか否かを判断する必要があります。

 

2.ビジネス環境

誘致が成熟した大都市においては、プロジェクトの内容が問われる様になっており、その基準を満たさない場合は、投資登記証の取得が難しくなっています。

中国のように加工貿易自体への規制は、未だされていませんので、輸出加工型企業への「保税措置の提供」という一種の優遇供与の形態は、今後も維持されそうです。

その他の優遇税制は、事業内容や進出地域を基準に定められていますので、ベトナムの発展に資すると考えられる事業への投資を促し、企業を選別していることがうかがえます。

また、環境対応、危険品管理対応に付いては、法律だけでなく、実務面でも強化されています。工業団地以外の土地の使用権を取得し工場を建設することは、10数年前には外資企業にも認められていましたが、現在では困難な状況です。

 

つまり、製造業に関していえば、その付加価値、製造品目等によって、企業側が選別を受ける立場となっていますし、環境保護基準の徹底は、今後の一層の管理強化が予想され、これが、企業の運営コストに反映されます。

 

ベトナムの産業集積の低さ(現地調達マーケットの未発達)、インフラの未整備というデメリットはありますが、9千万人超の人口を有する販売市場の大きさ、競争力のある人件費、タックスホリデー等は相対的に十分魅力的です。

それが、ベトナムで加工製造を行う事のメリットとなっているのは確かですが、企業規模・業種・付加価値等の要素で、企業側が受入側(地方)から選別される傾向が、徐々に強くなってきています。

 

 

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