【ルトガー ・ブレグマン】「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」

オランダ出身の歴史家でジャーナリストであるルトガー ・ブレグマン(Rutger Bregman)の「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」を読んでいます。

 

1988年生まれの著者による、21世紀の生き方みたいな内容?

 

まだ読了していないのですが、さすが歴史家というだけあって情報量がすごく多いので、ブックレビューというよりは覚書として、これから1章ずつ書いていきます。

 

第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」のはじまりは、産業革命以降の経済発展と、ユートピアのように見える現代において、人はなぜ不幸なのか、という点を明らかにしています。

 

産業革命以降、世界経済は250倍、一人当たり実質所得は10倍

歴史家でありジャーナリストである著者が並べる数字は、けっこうショッキングです。

 

1300年頃のイタリア人の平均収入:1600ドル

1900年頃のイタリア人の平均収入:1600ドル

 

600年の間、なにも起こっていないわけではありません。

 

政治的には大きな変化が起こっています。

 

例えばフランス革命は1789年ですから、中世から近世に移ってなお、庶民の生活レベルはまったく変わっていなかったということになります。

 

1820年には世界人口の84%が貧しい生活を起こっていますが、1981年には44%まで下がり、現在は10%を下回ります。

 

そして、1990年から2012年のわずか22年間に、大きな変化が起こっています。

  • 21億人以上が清潔な水が飲めるようになった
  • 発育不全の子どもの数は2/3に減少
  • 子どもの死亡率は41%も下がる
  • 妊産婦の死亡率は半分になった

 

今や60億人が携帯電話をもち、平均寿命は100年前の2倍以上。

 

栄養失調に苦しむ人は2/3以下に減少し、1日2,000カロリー未満で暮らす人の割合は、わずか3%!(2005年)。

 

ユニセフは、その役割を近いうちに終えるのかもしれません。

 

10代の若者の最大の健康問題「うつ病」

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」の第1章では、経済的成長によって、人々は十分な食事と健康な身体を手に入れたことを数字で示していますが、一方で、現代の闇ともいえる「うつ病」についてもとりあげています。

 

うつ病は10代の若者における最大の健康問題であり、歴史上かつてないほどに広がっています。

 

これを明らかにするために、ルトガー ・ブレグマンは次のような研究結果を紹介しています。

 

サンディエゴ州立大学の心理学者・ジェーン・トウェンギが、1952年から1993年までに行われた269件の研究を比較した結果、1990年代初期の北アメリカの平均的な子どもは、1950年代初期の精神病患者よりも不安感が強いことがわかりました。

 

また、子どもがかわいがられ過ぎていて、1980年代以降、若者の自尊心が急激に高まっているというのです。

 

自分のことを、賢く分別があり、魅力的だと考えている若者が増加し、自己愛を育てられているというのです。

 

1950年代に「自分は特別な人間」だと考えていた若者は12%でしたが、現代では80%もが「自分は特別な人間」だと考えているのです。

 

ネットを通じて、世界中の人は似たり寄ったりの共通体験をすることが多くなり、個人の体験にとって、国や地域や民族などの違いは少なくなっています。

 

つまり、特別な人間は昔よりも少なくなっているにもかかわらず、若者の自尊心は高く、自分は特別な人間だと思っているとは!

 

なんという皮肉でしょう。

 

しかし、競争社会である現代では、結果を出すことができなければ、その責めは自分が追うことになります。

 

自己愛が強く、自尊心も高い若者にとって、ほんの少しの失敗で燃え尽きるのは簡単です。

 

WHOは、2030年には「うつ病」が世界の病気の1位になると予測しています。

 

現代は希望なき豊饒の地

もうひとつ、うつ病が世界的な健康問題になっている理由が、希望がないこと。

 

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」では、朝ベッドから起きる理由がない、と書いています。

 

手に入れた世界以上に良い世界を思い描けない。

 

新たな夢を見ることができない。

 

これらは、現代人に共通した悩みかもしれません。

 

現代は、なんでも手に入るにもかかわらず、そこに生きる人にとってはディストピア(暗黒郷)だと主張します。

 

解決策ではなく道しるべを示すようなぼんやりとした世界では、人は変わろうという気になります。

 

「人間が幸せでいるためには、あれやこれやの楽しみばかりでなく、希望や冒険心や変化が必要だ」

「求めるべきは、完成したユートピアではなく、想像と希望が生きて働いている世界である」

バートランド・ラッセル(イギリスの哲学者)

 

ローマ帝国の最盛期に「パンとサーカス」が庶民に無償でふるまわれましたが、そんなものでは人間は良くならないし、希望をもって生きられません。

 

株式会社メタップス社長、佐藤 航陽さんの「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」にも、似たようなことが書かれています。

 

それによると、

  • 常に状況が変化することを参加者が知っており、緊張感をキープできること。
  • 想像力を働かせ、積極的に取り組み意欲が増すのは不確実性のある仕事。

などは、発展する「経済システム(つまりビジネス)」の条件だとあります。

 

政府の唯一の仕事は応急処置

似たり寄ったりの政党がかかげる政策は、ほとんど違いがなく、唯一の違いは所得税の税率だけ。

 

すべてを専門家にゆだね、政治は問題を管理するだけになっていると指摘します。

 

重要なことは目標を達成することで、質より量が優先される世界になっています。

 

これらの指摘には、わたしも大きくうなづいてしまいました。

 

政府は、制御すること、監視すること、そして国民を抑圧することしかできなくなっています。

 

さらに福祉国家では、原因よりも症状に重点を置くようになってきているというのです。

 

具体的には、病気になれば医者、失業すれば職業訓練というように。

 

いまや、自由主義や資本主義では、人間にとって本当に豊かな地は維持できないというのです。

 

手段より目的を重んじ、有用性ではなく良いかどうかで選ぶことが大切になっているのです。

 

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